徒然草

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宇宙警察官 コバーン(2)

 日根野 摩耶が眩いが、一瞬だけの光芒を目撃する少し前のこと。
 常夜の宇宙を、二筋の流星が切り裂いていた。いや、そう見えるだけで事実は違った。「それ」は流星ではなかった。「それ」の正体はUFOと俗に呼ばれる宇宙船であった。両方とも人間が数名入ることが出来る程度の小型UFOであった。
 先頭を行くUFOは、いわゆるアダムスキー型と呼ばれる形をしていた。それが宇宙を飛び回ることは大して違和感を覚える事はないだろう。UFOとは宇宙を往く代物だとされているからだ。だが、アダムスキー型を追いかけるUFOの形は、私たち地球に住む者の常識からすればシュールであった。追いかける方のUFOは地球の軽自動車と同じ形をしていたからだ。それが(何の意味があるのかわからないが)車輪を回転させながらアダムスキー型を追跡していた。
「そこのUFO、スピード違反だ。止まりなさい!」
 シュール極まりない軽自動車型UFOのハンドルを握るのは人間の男であった。彼は無線機の送話機を片手にアダムスキー型に呼びかける。だが、アダムスキー型は蛇行しながらも速度を緩めない。傍から見ていても止まる気は更々感じられなかった。
 しかし宇宙を舞台にしたカー………もといUFOチェイスは唐突に幕が切れた。アダムスキー型UFOが操作を誤って地球の引力に引かれて落ち始めたからだ。
「あのバカ!」
 軽自動車型UFOに乗る男は舌打ちしながらも地球に墜落したアダムスキー型UFOを追いかける。クラッチを踏みしめ、ギアを大気圏突入に入れ替える。そして軽自動車型UFOは地球の引力に案内されながら、地表目指して車輪を回転させたのだった。

 マンションを出た私、日根野 摩耶は光が見えた先、近所の雑木林に向かって早めに足を動かしていました。都心部から少し離れた、いわゆる郊外である陣風町にはまだ雑木林が残っています。私も幼い頃は弟と一緒にこの雑木林でカブト虫を捕まえたりしたんだけど………そういえば、家から歩いて五分もかからないほど近くにあるにも関わらず、私がこの雑木林に入るのは何年ぶりだろう?
 久しぶりに雑木林に足を踏み入れた私を待っていたのは光が差し込まない純粋の闇でした。夜中に雑木林へ人が入る事を考慮してないから街灯もなく、さらに木々が星明りの侵入すら許さない。懐中電灯を持っていない私は雑木林に足を踏み入れてすぐに後悔し始めました。
 光がないのがこれほど怖いとは思いませんでした。さっきの光の正体がわからないのは残念けど、どうせ正体がわかっても残念だったに決まっている。宇宙人とかUFOとかを素直に信じる事ができるほど、私はこども未成熟ではないんだから。見る間に私の興味は恐怖感によって塗りつぶされていきます。恐怖感は私に引き返すよう命令し、私は恐怖感に従う事にしました。
そうと決まったら、家のあるマンションの近くの自動販売機でジュースでも買って、さっさとベッドに入って眠りにつこう。まったく、どうしてこんな所に来ようと思っちゃったのかしら………。
 暗闇に対する不安と恐れをごまかすために、私はあえて考えをぐるぐる廻らせながら、回れ右、足を自宅の方へ向け直します。そして第一歩を踏み出した瞬間………!
 ガバァッ!
 何が起こったのかわからなかった。私にわかったことは天と地がひっくり返ったことと、左足首が何者かに強くつかまれて痛いことくらいでした。どうやらロープのようなものに左足首をつかまれて宙吊りにされているようでした。
「キャアッ!? 何? 一体、何なの!?」
 私は混乱してわめくしかできません。ですが、私の中でわずかになった冷静な部分が夜の向こうに何かいる事を告げていました。私の冷静さは、私の手にポケットの中にある携帯電話を取り出させるとカメラモードにして、何かの気配がする闇の向こうを撮影させました。
 パシャ
 シャッター音と同時にフラッシュが光り、闇の向こうにいた存在に光が一瞬だけ降り注ぎます。一瞬の光で見えた闇の向こうにいたのはタコに似た、足が沢山ある生物でした。だが、それがタコであるはずがありません。何せここは陸地だし、タコに私ほどの身長があるはずないですから。
「バ、バケモノ!!」
 ………後にして思えば、この悲鳴はタコによく似た生物を端的に現していたと思います。バケモノは沢山ある触手(?)の一本を伸ばして私の足首を掴み、宙吊りにしていました。
 だが、バケモノもどこかうろたえている様に見えました。キョロキョロと私と周囲を見比べています。
「(((( ;゜Д゜))))」
 バケモノが私にはさっぱりわからない言葉を発します。でも、その声のトーンからすると、ここにいるはずの誰かを探しているようでした。だとしたら私は人違いでこんな目にあってるのだろうか? そう考えると神様の気まぐれが恨めしく思えました。
「やっと見つけた! スピード違反を始めとする宇宙航行法違反の現行犯で逮捕する!!」
 その時、雑木林の暗闇の中から一人の男が現れました。暗くて姿はよく見えないけど、生真面目そうな声でした。
「(・`ω´・)」
 再びバケモノが私にはわからない言葉を発しました。だが、このどこの国の言語でもない言葉が男にはわかるらしい。男はこのバケモノと会話してみせました。
「そんなことをしてみろ! 罪を重ねるだけだぞ!!」
「ヽ(`Д´)ノ」
 よくわからない言葉に怒気を込めてバケモノは沢山ある触手のうちの一本を大きく振り上げ、そして男めがけて一気に振り下ろしました!
 男は横に跳んで触手から逃げる。だが、その間にバケモノは私を自分の傍に引き寄せていました。私はバケモノの言葉がわからないけど、バケモノの意図はわかりました。自分はバケモノの人質になってしまったのだ。しかもこのバケモノ、人質を生かし続けるつもりはさほどないらしい。私を縛る触手にさらなる力が込められ、私の骨が悲鳴をあげる。
「い、いた………い」
 私はあまりの激痛に耐えられず、そのまま意識を失ってしまいました。真っ暗な世界に堕とされた私は、五感が完全に奪われる………。

「貴様! ………もう、許せん!!」
 男は、少女を人質に取り、さらに害を加えたバケモノに対する怒りで歯を強くきしませる。そして次の瞬間、右手を高々と天に突き出し、力強く叫んだ。
「着装!」
 男の声に応じ、夜空を切り裂き、雑木林の木々を吹き飛ばして一筋の光が降り注ぐ。一瞬で光が消えたかと思うと、男はくすんだ紺色の鎧に全身を包んでいた。曲面を主体とし、腰に拳銃が収められたホルスターが装着された紺色の鎧。それこそは男の切り札、PKスーツと呼ばれる強化服であった。そのデザインは日根野 摩耶の弟が好んで見ているテレビのヒーローのようであった。
 PKスーツに身を包んだ男は何もない空間から、バッジを取り出してバケモノにかざしてみせた。☆の形をしたバッジを見ただけでタコのような形をした相手は恐怖心を呼び起こされ、全身を震わせる。そして男は高らかに宣言する。
「宇宙警察から逃げるために無関係の市民を人質に取った貴様の行動は、銀河連邦刑法第一九四三条に反する! 銀河連邦刑法に基づき、貴様を逮捕する!!」
 きっとバケモノは「で、できるものならやってみろ!」とでも叫んだのだろう。バケモノは触手を振り回して、男に立ち向かう。バケモノのパワーは地球人の理解を超えていた。まるでストローを指で折り曲げるように、雑木林の木々がバケモノの触手でなぎ倒される。こんなパワーの触手をマトモに受けたら、運がよくても骨がバラバラに砕けるだろう。だが、男の身の軽やかさも地球人の常識を外れていた。
「シュウッ!」
 バケモノの触手が木を切り倒す斧の破壊力とするならば、男の動きは風だった。いくら剛力を誇り、斧を振り回そうと風を断つことはできない。風は、捕まえられないからこそ風なのだから。
 男は腰のホルスターに納まっていた銃を手に取り、そしてダイヤルを調節してから引き金を引いた。銃口から発射された熱線はバケモノの表面を照らし、バケモノはその熱さにもだえる。一瞬だけだったが、その時、バケモノが振り回していた触手の動きは止まっていた。風には一瞬だけで充分だった。
「レーザー警棒!」
 男はPKスーツ左肘の篭手から短い棒を取り出したかと思うと、一振りでその棒を一メートルほどの長さに展開させた。そして棒の取っ手から先が蒼白く光り輝く。それはレーザー警棒と呼ばれる暴徒鎮圧用兵装であった。
「アタック!」
 男が振り下ろした一撃は摩耶を縛る触手をしたたかに打ち付けた。摩耶を締め付けていた触手の力は瞬く間に緩まり、摩耶はついに解放されたのだった。人質を失ったバケモノは観念したらしく、それ以上の抵抗は見せなかった………。

(続く)
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  1. 2007/10/06(土) 21:26:08|
  2. 試作小説
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