徒然草

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

宇宙警察官 コバーン(1)

 買ったばかりの画用紙が真っ白であるように、生まれたばかりの人の心は真っ白、つまり何もないんだと思う。そこに綺麗な絵を描くか、それともただ乱暴に描き殴るだけか、それはその人の生き方次第だと思うし、私はそんな他人の生き方にまで気を使うつもりはない。
 ただ、私が言いたいのは、「成長する」っていうことは心の画用紙を汚していくことなんだということ。そして汚れた画用紙じゃ、夢を描く事はできないということ………。

 夜になっても街は昼間のよう。家々の窓から漏れる灯りや街灯、闇を切り裂く車のヘッドライト、テールライト………。雲一つない夜空を見上げても、星の欠片すら見当たりません。
 私、日根野 摩耶は中学三年生。部活は夏で引退し、今では昼に学校で勉強、夜も塾や家で勉強、勉強、勉強………。勉強ばかりでかわりばえのない一日を過ごすばかりでした。
 その日も私は草木が眠る時間まで家で勉強をしていました。午前二時。子供のみならず、大人だって寝ている時間です。だけど受験生の私は寝る間を惜しんで勉強を続けていました。だからそんな時間になっても起きているわけです。
 こんな夜の遅くまで勉強しているけれど、しかし私にはこれといった目標があるわけではありません。ただ、周囲がそうしているから私もそうしている。それだけです。
 そういえば子供の頃は「お花の研究をする学者さんに」なって、世界一キレイなお花を作るんだって言ってたっけ。白い花に青い絵の具を塗りたくって、自分の名前をつけた花を作り上げていた事を思い出した私は少し懐かしく、そして気恥ずかしくなりました。子供の頃に思い描いていた夢が叶いっこないって気付いたのは何時からだったかしら? 目線は参考書の内容を追っているものの、その内容は全然頭に入りません。
 ………私はこれ以上集中力が続かない、勉強に身が入らない。いわゆる限界が訪れたことを自覚して、シャープペンシルを置いて参考書とノートを静かに閉じました。最後に軽くシャワーを浴びてベッドに身を預けよう。酷使された脳は睡眠を欲し、瞼は錘がつけられたように重い………。
 その時でした。私は窓の外を眩しい光が走るのを見ました。最初は車かバイクのヘッドライトが煌いたのだと思いました。でも、私の家はマンションの五階にあります。車やバイクは地面を走るモノなのですから、それが車やバイクのライトであるはずがありません。私はよくわからない光に興味を引かれました。たとえその光の正体がくだらないことでも構わなかったんです。勉強ばかりで退屈な日常に、ちょっとした味付けを加えてくれるスパイスになればいい。香辛料が食欲をそそるように、それは人生を楽しむ原動力になるから。
 私は寝ている両親と弟と起こさないよう、足音を殺しながら玄関に向かい、靴を履いて外に出ます。暖房の効いた部屋の中とは違い、冬の外の空気は夜の黒によって熱を奪われて、興奮で赤くなった肌に心地よく、鉛のように重たかった瞼は羽毛のように軽やかになりました。私は足早に光った方へ向かいました。

(続く)
スポンサーサイト
  1. 2007/10/04(木) 23:23:23|
  2. 試作小説
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<宇宙警察官 コバーン(2) | ホーム | 待ってました!>>

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://yamzui.blog57.fc2.com/tb.php/42-be223b57
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。